■貴重なエリントン、オリジナル盤を入手。裏面書き込みあり!
だが、よく見てみると、きわめて重要な箇所を示した書き込みだ。次の箇所に線が引いてあった。
LINN のLPレコードプレーヤーLP12を、電源部やらシャーシ部を強化しアームもECOSにまでグレードアップし、カートリッジもKandidにしたあたりで(それまでは、国内盤であろうと再発盤であろうと外盤であろうと頓着してこなかったのだが)、急に初期盤、オリジナル盤のよさが圧倒的に際立ってきて、それ以降、LPレコードはなるべく初期盤かオリジナル盤を入手するようになった。
最初に目覚めたのは、昨年、クレンペラー指揮マーラー「大地の歌」を中古レコード店で購入したとき。おなじレコードでも500円、1500円、5000円みたいに国内再発か、外盤か、外盤オリジナル盤かで、あまりに値段が違うので、試しに、と思って(ほぼ)オリジナル盤を購入してみたのである。音のキレがすごい。実にリアルな音、音場が気持ちいいでぞくぞくする。・・ここから長くなるので省略するが、とにかく、ここのところしばらくオリジナル盤にはまっている、ということだ。
今回、ようやく、オークションでかなり安めにDuke Ellington and Johnny Hodges の超名盤「side by side」(verve, mono MG V-8345)が入手できた。
なにしろ、コピーをかさねた再版盤とはちがって、ジャケット自体、魅力的だ。盤面もなかなかきれいでいい。いいなあ、と思ったが、なんと裏面に書き込みがあるのを発見。最初はあちゃー、残念と思ったのである。
all of the second side was recorded in New York on August 14,1958.
last of the three sides cut with a smaller unit in New York on February 20, 1959
エリントン・マニアならよく知っていることなのかもしれないが、この名盤は、1958年と1959年の二つのセッションのごちゃ混ぜ盤だ、ということをこの書き込みは示していた。
私はこのアルバムにはCD時代に出会っていて、これと対の「Back to Back」とともによく聞いていた。なにしろ、ジョニー・ホッジスのアルト・サックスの音色はあまりに魅力的で、一聴して「これジョニー・ホッジス!」と分かるほど。こんなにビブラートと音色が美しいサックス奏者は、他にはいない、と(勝手に)思っている。それで、これらのアルバムは、よく聞いてはいたが、CDの流し聞きの場合には、1,2,4曲目がエリントンのピアノで1959年。その他はビリー・ストレイホーンのピアノで1958年などとは、絶対に気がつかない(なかった)。
こう意識して聞いてみると、絶対に1958年の演奏のほう(A面3曲目、B面すべて)がいい!と感じる。こちらには、ホッジスの他に、Ben Webster(ts)、Roy Eldridge(tp)なども参加している。
さらに、この書き込みのせい(おかげ)で、裏面のライナーノートを読むと(意訳してみると)
Just a Memory(B面1曲目)は、まず、Benがやさしくしかし力強いソロを取る。なかなかセンチメンタルだ。次のRoyは、これまで録音されたなかで一番はっきり、彼がいかにリリカルでトレイニングのいきとどいた演奏をするか、が分かる。ウエブスターとエルドリッチが雄弁にブローしたあと、ホッジスのソロは、シンプルであることが、いかに意味深いものであるかを示す典型だ。
数分の曲をここまで端的に表現したNat Hentoff という評論家は実にすぐれているなあ、と感心しながらも、このソロはBenで次がロイで次がホッジスで、と初めて意識しながら、この曲を聴いた。この一曲を実に深く味わうことができた。
CDやネットストリーミングで、このアルバムを聴いたとしたら、ここまで丁寧に一曲、一曲を聞き込むことはなかったろう。
貴重なオリジナル盤ジャケットに、汚されはしたが、しかし、的確な書き込み、ありがとう、という気持ちになった。