KUROのブログ

黒崎政男〜趣味の備忘録

2018年07月

今日は隅田川花火大会の日だったが、台風12号のために明日に延期された。真夏の夜、だからというわけでもないが、LINN LP12(urika2)で、Midsummer Night's Dream をWE205F単段アンプで鳴らしてみた。

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 ペーター・マークという指揮者は、特にメンデルスゾーン交響曲第三番スコットランドの名盤で有名で、ほんとにすばらしいスコットランドなのである。かつて私は、この第三番はずっとクレンペラー指揮フィルハーモニアの演奏を愛聴してきた(デジタル・ファイル化Hi-res化したものを、LINN Klimax DSで鳴らす)のだが、嶋護氏が「クラシック名録音106究極ガイド」(2011年ステレオ・サウンド社)でこの盤を絶賛していたので、試しにと思いe-bayで購入してみたのである。嶋氏のガイドはなかなか名文なのでちょっと引用してみる。
「ペーター・マークが40歳の頃に録音したデッカ盤は、みずみずしい演奏と豊かな響きで、聞く人すべての心をとろかしてしまう。・・・デッカ盤の中でもロンドン響とのモーツアルトやメンデルスゾーンはいまだに評価と人気がきわめて高い。その理由は「スコットランド」の始まりの数分で聴けば、誰もが直ちに了解せずにはいられない。これは、キングスウェイ・ホールとウィルキンソン録音の特徴をごっそり集めてみせたショー・ケースなのだ。・・・ハーモニーがまるで陽の光に照れされたように生き生きと浮き上がりだす・・・」(76頁)
 デッカ盤の録音プロデューサー、ウィルキンソン録音の数多くの名盤のこと、そして、キングスウェイ・ホールのこともここでは措く。

 このペーター・マークのスコットランドを聴いたときには、演奏と音のあまりの新鮮さに驚かされた。こんなに長い間いろいろクラシック音楽を聴いてきて、しかもずいぶん聞き慣れた曲が、こんなに新鮮に魅力的に聞こえるとは。。

 そして、この第三番と並んで有名な録音がこの「真夏の夜の夢」なのである(ふー、やっと本題に戻れた。。)。

このところの感じなのだが、真夏の暑い時のオーディオ、真空管の発熱でうんざりはするのだが、何故か、この猛暑のなかでLPレコードは実に<いい音>でなってくれている。普通は、暑すぎて音がへたってダメだ、といいたいところなのだが、ずっといい音で鳴っているのが不思議だ(もしかして私が暑さでボケてしまって、音楽が美しく聞こえてしまうのだろうか)。
 ペーター・マーク指揮の「真夏の夜の夢」は、冒頭、トレモロのような弦のppから始まるが、この音の美しさに、もうここからして、とんでもなくゾクゾクさせられる。そして盛り上がりの金管の炸裂が透明でタイトに響き渡る。もうこれほど心地よく気持ちのいい響きはあるだろうか、というほどの鳴りである。なんとすばらしい演奏と録音なのだろうか。
(ちなみに、もう一つの名盤とされているアンドレ・プレヴィン指揮ロンドン響「真夏の夜の夢」の演奏(1976年録音)のほうは、私の耳には、もう十分聞き飽きた演奏に(初めて聴いて)感じられた。この差はなにか。いつか考えてみよう。)

 もう70年前に開発された技術であるStereoという方式に、改めて感激してしまう。通常は、SPレコードの一つのホーンから流れ出てくる音楽(「モノラル」、とステレオが出来た後では、retrospectiveにそう呼ばれるようになった)ばかり聴いていたので、実体的な音は、ステレオなどというillusion(いわば、人間の聴覚の錯覚を利用して、左右の空間的な広がりを表現する)ではだせないだろう、と思ってきたのである。(まるで私は1950年代の、ステレオという新技術が登場したときに反対した頑迷保守派のようだ(笑))
 ステレオ方式、万歳!と叫びたくなるような演奏(おそらくウィルキンソン録音の特徴なのかもしれないが)で、よくぞ一つの溝grooveから左右の音を見事に描きとってくるLPプレーヤーに感動する。1980年代に夢中になってオルトフォンSPU-AとSME3012アームを使って必死にいい音を出そうとしていたときの音とは隔世の感がある(注)。
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1960年代に作られていたLPレコード。それを(1970年代に初発売され、それからずっと)2018年までに進化深化させてきた今日のLPプレーヤー(しかもイコライザーはデジタル化されているurika2だ)で再生して、ここに一瞬だけ出現する音楽。
 完全なアナクロの喜び。それがアナログではなくデジタルも取り入れて実現されていることはじつに興味深いことである。

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このレコードのジャケット裏面には、わざわざ(おそらく)前持ち主の氏名が記されている。(Charles Douglas -- London -- September 1967)とある。チャールズが1967年の9月にこのレコードを(おそらく喜んで)購入したのだろう。
ちなみに、このDECCA盤は、Ace of Diamondsシリーズで、いわば、RE-issue盤である。英デッカ再発盤なのだが、このシリーズはオリジナル盤と遜色のない音がすると言われている。しかし、注意が必要だ。このシリーズでも、発売時期があって、初期のほうが遙かに音がいい。その見分け方は、レコードレーベルの上の部分(11時~1時)に、大きな文字でFULL FREQUENCY .....とあるものが初期盤。

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後期盤だと、ここが小さな文字でALL RIGHTS OF.... というふうになる。以下の写真は、マーク「スコットランド」のAce of Diamond後期盤。

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このマーク「スコットランド」盤に関しては、結局、いろいろな種類を入手してみている。Ace of Diamond(DECCA)初期盤、AoD(DECCA)後期盤、LONDON初期盤、DECCA初期盤(mono)など。やっぱり絶対最初期盤、と思ったり、後盤でもなかなかだよね、と思ったり、迷宮である。
 E-bayの出品者もこの違いを知って出品している人と知らない人が混在している。Ace of Diamond盤購入のときには、必死にレーベル11時~1時を凝視することになる。このレーベルの写真を挙げていない出品者は論外である、ということになるのである。

(注)もちろん、オルトフォンやSMEのアームそのものがNGと言っているわけではない。今でも、私はEMTアームに直付けできるモノラル専用の旧型オルトフォンカートリッジを探している。ただ、LPプレーヤーの場合、アーム、モーター、ボード、カートリッジを単体で揃えて、それを自分でアッセンブルする場合には、トータルでの出来上がりの質の責任は自分になる。ほんとにその組み合わせがベストなのかどうかはほぼ偶然任せになる可能性が高い。現在、導入している二つのLPプレーヤーは、LP12(+urika2)とEMT930st(+155st)だが、両者ともラインoutまで、一つのメーカーの作り上げであり、私の偶然の選択の余地がないようにしている。今回はそんな形でLPプレーヤーと付き合っている。

(未)
レコードといえば、ここ20年ほど、SPレコードに集中していて、それを手巻き式蓄音機でならしている日々が続いていた。
二年前に、ついにまた30年ぶりに、LPレコードを再開。かつてLPレコードはすべて処分したので、今回、この二年でまた大量にLPレコードを再入手。再開して、はじめてLP初期盤やオリジナル盤の魅力にとりつかれたわけだ。
衝動買いのようにして買ったのは、LINN LP12 入門セットがちょうど中古で存在していたから。このリンのプレーヤーを入手してからは、興味がLPレコードのほうに移っていた。

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■Eric Dorphy の代表作「アウト・トゥー・ランチ」(1964)初期盤をEMTとLINNのプレーヤーで聞き比べる


 昨日、エリック・ドルフィーの OUT TO LUNCH (Blue Note )の初期盤をようやく入手した。このLPレコードは1980年代のフランス盤や、日本のキング盤などで聞いていたのだが、ついに、オークションで落札。昨日届いた。これの本当のオリジナル盤は何万円という値段がついていてとても入手できないが、これは、liberty盤で、US初期盤というべきなのかもしれない。ドルフィーのサックス、特に、バス・クラリネットに持ち替えて演奏した音楽は計り知れないほどの魅力にみちており、At Five Spot vol1やvol2はブッカーリトル(trp)との戦いがすさまじい。
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それで、ジャズならEMT930st(イコライザー155st)とステレオ用カートリッジTSD15(ものすごくいい音のするカートリッジだ)で聞いてみた。(アンプは、単段WE205Fシングルアンプ+タンノイ III LZ (red monitor)確かにすばらしいのだが、圧倒されるほどではなかった。

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じゃあ、LINN LP12 urika2 (カートリッジはLINNのフラグシップであるKandid)は?。線が細いかなあ、と予想して針を下ろす。
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LINN LP12(urika2内蔵)ーー>LINN Klimax DSM2 ーー>WE205Dメインアンプ

A面2曲目(6分弱。曲の構成からいってもドルフィーの魅力から言ってもこのアルバムのなかの白眉だとおもう)Something Sweet, Something Tender。!!!すばらしい分厚い音。それぞれの楽器のリアリティがすごい。ドルフィーのバスクラリネットの奥底からなり出す音色。しかも、それらが実にスリル感に満ちているのだ。LP12 urika2で鳴らす音楽は、ちょうどライブで聞くように、スリル感に満ちている。いまここで生成してきているかのような鳴り方をする。その点EMT930stの方は、レコード再生芸術の最上、みたいな鳴り方だ。

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つまり、再生音楽としてとてもすばらしいのだが、LP12の方は、むしろライブに行って生を聞いているような鳴り方に近いのだ。わくわくする。いま生成してくるように鳴るのだ。

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(メインアンプは、単段WE205Fシングルアンプ)



 でもだからといってLINN LP12のほうがEMT930stよりいつでも優れている、とも言えない。昨夜は、Peter Maag指揮のモーツアルト、クラリネット協奏曲K.622をペイエのクラリネットで聞いた(1959年録音)のだが、これが見事な名演、名録音で、実に幸せになる。ふくよかで優雅な鳴り方だ。(westminster盤のウラッハ(cl)の演奏(モノラル)もすばらしいが、このマーク指揮ロンドンフィル・首席クラリネット奏者のモーツアルト(ステレオ)もなんといい演奏なのだろうか)。LP12で鳴らしていて(アンプはRCA250シングル)あまりに天国的なので、ふっとEMT930stで鳴らし替えてみた。まあ、なんということか。透明度はそのままで、さらにコクがあるというか、見事な再生音。ああ、EMTのTSD15というカートリッジはなんとすばらしいのだろう。。これはEMTのほうが魅力的だな。

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(ほんとのオリジナル盤はDECCA盤SXL2238だが、これはLONDON盤(デッカの海外向け用レーベル)。透明で品のいい躍動感があり実にいい音がするレコードだ。)

こう思ってさらに、ブルックナー、ベーム指揮4番(ついにオリジナル盤DECCA ファーストプレスを入手した)を再生すると、うーん、いい音ではあるが、ちょっと塊になる。力感だけが先行する感じになる。また、LINN12に繋ぎ替えて再生する。ブルックナー、すばらしすぎる。オケの隅々まで見通せてしかもエネルギーに満ちている。これはもう再生ではなくて、ライブの再現だ!と思わせてしまうほどいい響きに満ちている。

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これは、付属のインナースリーブの年月(8-74)、(1974年8月)から見て、ほんとのファーストプレスだと思われる。
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以前、ベームがしーっと指を唇にあてているジャケットの日本盤(london)も気に入って掛けていたが、このDECCAオリジナル盤と比べると、やはり(<--笑)、あちらは音質が薄くちょっと上品めな感じに聞こえる。このDECCAオリジナル盤は、音が厚くエネルギー感に満ちている。同じ、ベーム=ウイーンフィルの同録音なのに、かなり印象が違って聞こえる。しかし、どちらでブルックナー4番を聞きたいか、というと迷う。ブルックナーの交響曲でも、このベーム=ウイーンフィル4番ロマンティックは、あの日本盤LONDONは、極めて独自の音質を持っていたようにも思われるからだ。・・・・・・・・こうして、LPレコードの初期盤を巡る探索は、いつも楽しくも深い迷宮に入っていってしまうようでもある。。
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さて、論旨を戻そう。いずれにせよ、こうやってみると、LINN LP12 でカートリッジをKandidに替えてからは、これで鳴らすと、初期盤、オリジナル盤の場合のよさが際立つ。Kandidだとレコードの差がきわめてはっきりと描き出す。他方、EMTのTSD15の場合には、初期盤とreISSUE盤との差異がそれほどでないような感じがする。EMTならレコードにそれほどこだわらなくても、いい再生音がする。LINNの場合には、レコードの違いをはっきり描きわけてしまう。初期盤やオリジナル盤がどうしても魅力的に鳴ってしまう。
 これはあくまでここ二三ヶ月の体験の暫定的な結論である。また、あらたな発見に驚かされるかもしれない。


 ブルックナーの交響曲は、レコードブレーヤー、LINN LP12を使用するようになって、実によく聴くようになった分野だ。
 二年前にLPレコード再導入をして(つまり、LP12を購入して)、さまざまなLPレコードをまたゼロから入手はじめたのだが、まず最初に、LPレコードの音のよさの魅力にはまったのは、オイゲン・ヨッフム指揮ベルリンフィルのハイドン交響曲88番のレコード(ドイツ・グラモフォン DGG 138823)の初期盤を偶然手に入れた時だった。
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その音のよさと演奏のよさにすっかり魅了された(tulip型、alle、赤ステレオ、というほんとの初期オリジナル盤)。1960年代のベルリンフィルの響きのよさ。多少暗めだが深い力感にあふれたオケの音は、ヨッフムの奇をてらったところがないのに実にナチュラルでしかも音楽の喜びにあふれた演奏なのである。ハイドン88番は、かつてフルトヴェングラーの演奏をかなり聴いていて耳になじんでいたが、ヨッフムの演奏はまたまったく別種の音楽の喜びに満ちていた。
 この時代(1960年代)のドイツグラモフォン盤のオーケストラの音はとても魅力的だ。オケがいいのか、録音会場がいいのか、あるいは、録音ディレクターがいいのか、まだ突き止めきってはいないのだが。


 それでそこから、1960年代ヨッフム・ベルリンフィルのレコード探しが始まった。それで二番目に入手したのが、オイゲン・ヨッフム指揮ベルリンフィルのブルックナー交響曲第九番。これがすばらしかった。ブルックナーがすばらしかった。かつて二十数年前までずっとLPレコード再生をやってきたのだったが、ブルックナーなどはまったく魅力的に鳴ることはなかった。分厚い音の塊があっただけだった。LINN LP12の導入で面白くなったのは、大編成の分厚いオーケストラの音だった。

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で、不思議な現象が起こったのはその頃からだ。LINN LP12、特に内部イコライザーurika2でオーケストラのレコードを聴いていると、なぜか、無性に、ライブのオーケストラが聴きたくなってしまうのだ。

■ライブの演奏会でマーラーとブルックナーを聞く
 なにか、生のオーケストラとurika2の音を比較してみたくなるのかもしれない。
それで、都内で行われる演奏会で、マーラーとブルックナーの演目がかかるところは
ないか、と探すと、近所のすみだトリフォニーホールで、新日フィルがマーラー4番とブルックナー4番をほぼ続けて別の日に演奏することが分かって、さっそく出かけて、生のオーケストラの音を聴きにいった。(2018年7月のこと)。一方は、まあ我が国のオケもすばらしい、これで充分豊か、と思い、もう一方は、なんてひどい音の鳴らし方、意味のない演奏なのだろう、ととてもがっくりした。同じオケでも指揮者が違うとこんなに音の鳴り方が違うのかとびっくりした。


 しかし、歴史に残るような名演奏を自分の聴きたいときに心ゆくまで聴くことができるオーディオ、という存在にあらためて深い意味を見いだせた。LP12のurika2を入手して、ほんとうにうれしい、とそう思えた日だった。

■壁に反射させて聞くコーナー反射型スピーカー(モノラル)を直接音で聞く

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   中央に見えるのが、EMGコーナー反射型スピーカー(1950年代製)。本来はこれを裏向きにして聞く。音を一度壁に反射させて聞く、モノラル時代ならではの発想だ。今日は、スピーカーをこちら向きにして、直接音で鳴らしてみている。


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奥の大きなラッパは、蓄音機。EMGinn Expert senior(72cm口径)a.1933年製
蓄音機とモノラルスピーカーと同じEMGで並んでいる。



モノラルレコード専用のシステムを構築してきた。モノラル専用のシステムが不安定なのは、いいスピーカーであればあるほど、一本(モノ)だけでなく、もう一本欲しくなって、どうしてもステレオでも聞きたくなることだ。そうなると、結局、モノラルを聞く時には、片チャンネルだけ使ってきくという形になってしまうので、不全感が伴い、最後にはやはり二チャンネルステレオ装置に戻ってしまうのである。
だから、本気でモノラルシステムを組もうと思ったら、ペアには金輪際ならないような、きわめてレアなスピーカーを探さなければならない。
幸い、イギリスのハンドメイド蓄音機メーカーのEMG社が、1950年代に発売したEMG model DCR 15D (Tannoy 15" monitor Silver)というコーナー型スピーカーをこの春、入手できた。内部にはタンノイの38cmシルバーモニターが組み込まれている。これがもう一台手に入る(そしてステレオにしたい)とは、ほとんど思えないので、安心して、モノラルレコード専用システムを作り上げることができた。EMGについて書かれた本にも、このコーナー・リフレクター・キャビネットの当時の広告が載っている。
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メインの装置では、LPプレーヤーはLINN LP12 を使っているのだが、カートリッジがアームに直付けされているので、カートリッジを(モノラル用とステレオ用と)取り替えることができない。この直付け形式はしかし(微少電圧の箇所で)接点が一つ減ることになるので、音質的には優れているしまたそのカートリッジ専用にアームの調整もなされるので、絶対やめることができない。Kandidというカートリッジだが実にすばらしい音がするし、これを片チャンネルだけ使ってモノラルレコードを再生することもできる。LINNのカートリッジもAKIVAとKrystalと使ってきたが、このKandidに至って、モノラルレコードも不思議なくらいいい音で鳴らせるようになった。なので、モノラルレコードを鳴らすときには、片チャンネルのアンプを切って、片方のスピーカー(tannoy IIILZ red)だけで(少し音量を上げて)聞けば、問題なくモノラルは鳴るのである。鳴るのではある、が、しかし、片チャンネル<だけで>聞いている、という不全感もどうしても伴ってしまうのである。そこでモノ専用システムを作ったわけだ。
モノラルレコードは、普通は、ステレオレコードが通常で、それ以前の音質的に不十分な存在、と思われがちであるが、そんなことはない。モノラルに合った装置できくならば、それは安定した実在感のあるすばらしい音がする。ステレオなんていうのは、錯覚を利用したイリュージョンなわけだから(いやそのイリュージョンの魅力もきわめて大きいのではあるが)。(もちろん、モノラルそのものの音質が魅力的でなければならない。ステレオのようにごまかしが聞かず、そのものがそのまま出てくるのだから。)
それにモノラルLPレコードの時代である1950年代はすばらしい演奏(ジャズもクラシックも)で満ち満ちている。

さて、これまでは以下の解説のように音を一度壁にぶつけてから聴いていた。
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この当時の広告でも、このスピーカーは背中向きで使われていることがわかる。




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このスピーカーの内部 :ほんとにタンノイ monitor silver (超稀少)が入っている


たしかに反射音できくと、中高域は一度反射し、低域はそのまま下から出てくる。反射の壁からの距離とか、壁の素材とかを調整すると、とても広がりがあってバランスのよい音がでてくる。(いまは結局、額装した額縁のアクリル板を置いているがこれがこれまでで一番いい音のする反射板である)。

だが、なんとなくスピーカーがいつも背中を向けているようでなんとなく寂しい気がしてきた。それで正面を向かせてみたのである。導入当時は低域がそれほど鳴っていなかったので、正面向きは高域がキツい感じがしたが、今日は、低域が豊かになりだしているので、正面でもかなりいい音がするようだ。むしろ、中高域の解像度が上がって聞こえる(直接聞いているのだから当然だろう)ので好調である。

いま掛けているのは、1950年代に録音されたヴィオラダガンバのソナタ。実に深々となっている。J.S.バッハのガンバソナタ全曲である。
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これはL'oiseau-lyreレーベル! モノラル時代からオワゾリール・レーベルがあったとは驚きだ。我々には1970年代からのカークビーやマーチン・ヒル、ホグウッドなどで馴染みのレーベルだが、古楽ブームの始まる前からこんなすばらしいレコードを出していたとは。
そういう意味では、おなじviola da gamba sonataの、1951年のArchiveから出ているヴェンチィンガー盤も実にすばらしい。
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このレコードは、古楽ブームが始まる前の1951年に録音されたものだが、これほどすばらしい演奏は聴いたことがない。このガンバ・ソナタはバッハの中では超名曲というほどではないと思うが、あのWenzingerがこれほど見事な録音を残していたとは知らなかった。

音があまりにいいのでライナーノートを見ていると、ガンバは
Jacobus Stainer(Absam)1673年製
のオリジナル楽器を使っていた。なるほど、である。(ハープシコードのほうは、18世紀ジルバーマンの楽器をノイペルトがコピーして1932年に製作したもののようだ)ほんとにいい演奏、いい音なのである。

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