
名録音技師のケネス・ウィルキンソンが録音した多くの名レコードのうちでも、その音のよさ空間感などで一、二に挙げられる「ロイヤル・オペラ・ガラ・コンサート」(1959)。このオリジナル盤は(前にも書いたが)ヤフオクだと20万円、e-bayだと40万円を超える値段で出品されていて、とてもとても手を出せるしろものではない。そんなわけで、2005年にスペインでリマスタリングされた復刻版を手に入れて楽しんでいた。
先日、フラウト・トラヴェルソの世界的第一人者の有田正広氏と、銀座のオーディオサロンで、レコード鑑賞対談をやったときにも、このレコードを私のお気にいりとしてかけた。
「クロサキ教授のオーディオ哲学サロン第3回 ~古楽トラヴェルソ奏者・有田正広氏 再び」
そのとき、私は同録音で別のリマスタリング盤(2016年)も入手したばかりだったので、その別物のレコードも同時にかけた。2016年盤は、ぱっと聞いた感じでは迫力があっていい感じだが、2005年盤のほうが、自然でいい音がする、と有田氏も会場の方々もほぼその方向で意見が一致した。
そんなわけで、私はますますこのレコードのオリジナル盤(絶対高価すぎて買えないけれど)を聞いてみたいなあ、という気持ちになっていた。
そんなとき、いつものようにヤフオクでこのレコードで検索していたところ、とても面白い存在のレコードがある、ことを知った。
{米盤は二枚組でリリースされたが、本来のオリジナルである英国では一枚に編集されVICS番号で初出となる}とあった。なにい!英国盤があるのか。そこでe-bayで検索すると、あった!しかも相場は1万円から2万円。もうレコードに関しては金銭感覚が狂っているので、「安い!」と思い、さっそく入手したのである。それが届いた。

右側が英国盤 (1967年)。左側は下が2005年盤。上が2016年盤。
この英国盤。表題も「バレエ名曲集」と平凡だし、ジャケット・デザインもおざなり。ジャケットを見る限りでは、こんなすごい演奏と録音だとはとても思えない。

なんともどうでもいいようなシリーズの一枚として出されたような感じ。裏面を3種類並べてみた。

とある。英国盤はRCA VICTROLA ということになっているわけだ。DECCAとRCA、Victorolaとvictorなど関係がとてもややこしい感じ。レコードレーベルは次のようになっている。

チャイコフスキーの「くるみ割り人形」のマーチ。わくわく、どきどき感がすごい。次にあの音がやって来るぞ!というぞわぞわ感は初期盤ならでは、の感覚である。
もうここで止まりたい。これで充分だ!米盤二枚組オリジナル盤は、おそらくこの英国盤と大差ないだろう。大丈夫。と自分に言い聞かせる今日だった。

今日のLPレコードプレーヤーは、
LINNのLP12。内蔵イコライザーurika2が内部に入っている。カートリッジはLINN KANDID。このプレーヤーは、初期盤や再販盤、復刻盤の違いをいやというほど明確に描き出してしまう。このLP12(+urika2)にしなければ、こんなに初期盤フリークにはならなかっただろう。因果なプレーヤーだ。