
我が家のオーディオルームには、CDをかける装置がしばらく不在だった。CDはパソコンでリッピングしてデジタル・ファイルの形にしてからLINNのKlimax DSMで再生する形が常態になっていて、CDを直で聞く、という形態はしばらくやめていた。
過日、季刊誌 STEREO SOUND(2019winter No.209)に「オーディオファイル訪問記」として拙宅のオーディオ装置が紹介されたのだが、その取材のおり、オーディオ界の大御所、柳沢功力氏から、なんでCD再生装置がないのだ、といぶかしがられた。

そんなこともあったし、直にCDをかけたいこともあるし、で、ついこの間、CDが直接かかるプレーヤーを入手した。プレーヤーといっても、トランスポーター。DACの部分が省略されている、読み取り装置だけのような形。これをデジタルのまま、Klimax DSMに送ってそのKlimaxのDACを使用するのだから、通常のCDプレーヤーよりは格段に音がいいことが予想される。機種はNUPRIMEの CDT-8 Pro。

さて、どんなCDソフトをかけてみようか。そういえば、CDも同じ録音でも、初期盤、後発盤、リマスタリング盤と、いろいろ音質が違うことが予想される。
ちょっと調べてみると、CDもなんとやはり最初期盤が音がもっともいい、と言っている人たちがいる。それによれば、CDが始まったころ、西ドイツのHanover工場で作られたCD盤が実に自然でいい音がする、というのである。まるでLPレコードの初期盤の世界と同様の構造だ。この真偽はおいおい確かめていくことにするとしても、とにかくまずは西ドイツ製のCDを(自分のCDラックから)探し当ててかけてみることにする。

そこで行き当たったのが、ブレンデルのピアノでバッハ作品集。実にいい音で鳴る。CDも捨てたもんじゃあない。
じゃあ、最近のCDはどうだろう。ジャズで女性ボーカル、キャロル・キッドのCDをかけてみよう。
このようにCDを直でかけて鳴らす音質と、CDをリッピングしてDSで再生する音質にはずいぶん違いがあるように思える。以前は、リッピングしたほうがいい音がすると思えていたが、今回の装置では、なかなかそう単純ではないようにも思われる。リッピングの音は精緻であるが、エネルギー感という点ではCDのほうが勝っているようにも思われる。これはまだファーストインプレッションだ。
ついでに、CDとLPレコードの音も比較してみちゃおう。

ちょうど、アルゲリッチのチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番が、西ドイツ製初期盤CDと、同演奏のLPレコード(オランダ・プレス、ほぼ初期盤と言えるLP)が手に入った。ほんとにラフにちょっとかけで、それぞれ鳴らしてみよう。最終楽章の一部分。まずはCD.
次はLPレコードでほぼ同様の箇所。
さあ、どうだろう。性急な結論は出さないこととしよう。CDもなかなかの音で鳴っていると思われる。ただ、フォルテシモになったとき、および、弦楽器の音色と奥深さに関してはやはりLPレコード再生のほうがいいようにも感じる。
さあ、またいろいろ試してみよう。