
久しぶりにモノラル専用装置を使って、LPモノラル盤をいくつか聞く。
LPレコードがステレオになるのは、1950年代の最後ぐらいから。50年代の録音はほぼモノラル録音だと言ってもいい。そしてモノラル盤は、通常のステレオ用カートリッジではなく、モノラル専用カートリッジを使用して再生するのが正しい、というか、いい音がする。

モノラルレコード専用装置は、レコードプレーヤー がEMT930st(+TND25(EMTモノラル用カートリッジ)+WE205Fプッシュプル アンプ(自作)+スピーカー タンノイ15インチ monitor silver(モノラル)。このスピーカーはもう絶対、モノラルでしか手に入らないだろうと思われる、EMG(英国蓄音機製作会社)が戦後に作った、EMG model DCR 15D speaker (Tannoy 15" Silver) 。1950年代半ばの製品である。
まずはよく聞いているアートテイタムのピアノとベニー・カーターのアルトサックスのほぼDuo(ドラムスがルイス・ベルソンでほんとはトリオ)のような演奏。テイタムの転がるきらびやかな音のピアノが魅力的だが、ベニー・カーターのアルトサックスもとてもくつろいでいるがきわめて独特の音のアルトサックスだ。すばらしいモノラルレコードだ。

次にかけてみるのが、スタンゲッツのテナー・サックス。オスカーピーターソントリオをバックにご機嫌に吹きまくるモノラル盤。アルトとテナーの差があるとはいえ、このスタン・ゲッツとさっきのベニー・カーターのサックスの音色がまったく違うのには驚く。この装置はちゃんと音色を描き分けてくれているということだろうか。このトリオは、ピアノ+ベースの他がドラムスでなく、ギターとなっている。ハーブ・エリスのギターがまたいい味を出している。

最後に、1950年代の名録音。ブラームスのチェロソナタ一番を、フルニエのチェロとバックハウスのピアノで聞いてみよう。派手な録音ではないのだが、滋味溢れる音色の演奏で、自然と引き込まれて深々と聞き込んでしまうすばらしいレコードだ。

じっくりと聞き込んでしまう、魅力に満ちたモノラル録音のレコードたちだ。