サックスの音が妙に生々しい。まるで現場にいてコルトレーンのサックスを目の前で聞いているようだ。こんなに緊張感に満ちたアルバムだったっけ?これが、新軸受けKarouselを装着したLINN L12でこのアルバムに針を落とした瞬間の驚き、だった。

A面 一曲目 say it 途中から
コルトレーンのサックスが実に生々しい。これまでもう50年も(笑)聴き続けてきた演奏だ。このアルバムはコルトレーンのなかではすっかりリラックスした演奏だと思ってきた。
だがなんとリアルで緊張感に満ちているのだろうか。
こうやってきくとマッコイタイナーのピアノが、エルヴィン・ジョーンズのドラムスが、コルトレーンのサックスをじっくり聞きながら弾いているのがよく分かる。それぞれの呼吸というか間の取り方が手に取るように分かる。臨場感、ライブ感がすごい、と言えばいいのだろうか。
このバラッドは、こんなアルバムだったのだろうか。
you don't know what love is
こんなに悲痛なサックスの音だったか。ほんとに愛が通じない相手に対する悲痛な叫びに聞こえる。このアルバムはむしろこれまでムード音楽的だ、とずっと思ってきたのに。
まったく鳴り方が違う。大昔にLPで聞いていたときと。CDで何度も何度も聞いていたときと。Hires音源でデジタルファイルをならしていたときにも。そして、ついこの前までのLP12(Before karousel)で聞いてきた音とも。こんなに真剣に音楽が作られていた、とはという驚きである。
もうすこし、コルトレーンを別なアルバムで聞いてみよう。
そうだ、キャノンボール・アダレーと(マイルス・デイヴィス抜きで)入れたアルバムを聞こう。
Cannonball Adderley Quintet in chicago (mercury)(1959)
A面1曲目 Limehouse Blues
ふたりの冒頭のサックスのユニゾンがこんなに魅力的だっただろうか。テナーとアルトの二台のサックスがこんなに見事に両方とも分離して聞こえてくる。最初はそれぞれの個性的音でなっているのだが、短いフレーズでバトルを繰り返しているうちに、だんだん、どっちがどっちだか分からなくなってくる。キャノンボール・アダレイはアルトなのに音が太いし明るい。コルトレーンはテナーなのに音が高く鋭いが陰の音だ。最初のキャノンボール・アダレイの超人イスピードアドリブに続いて、コルトレーンが追っかけていくバトル。そのうち、キャノンボールの音がなにやらコルトレーのような音色になっていくように感じられもする。リードしているのがキャノンボール・アダレイなのは明らかで、コルトレーンは分が悪い。そして、2つのサックスがごちゃごちゃになってくるのだが、とにかくものすごい気迫のバトルが繰り広げられている熱気が強烈に伝わってくる。こんなにおもしろいレコードだったろうか!?

このレコード(Cannonball Adderley Quintet in chicago)は私にとっては実に鳴らしにくいレコードでいい音がした感じがついぞしなかった。今回は、うーん、なんと魅力的な演奏なんだろう、と唸ってしまう。
■キャノンボール・アダレーの勝ち?
さらにこの演奏、もう一度聞き直してみる。冒頭のサックスのユニゾンはほんとに魅力的だ。サックス二本であるということが、このLP12を新軸受けにしてから、とてもよく分かる。そしてまずキャノンボールアダレーが実に軽快に飛び出してくる。超乗っている感じだ。すごいアドリブ。続いて登場するコルトレーンはちょっとキャノンボールの熱気に押されて、なんとか出てくる感じ。ちょっと迷っているうちに、キャノンボールが次から次からフレーズを投げ込んでくる。ちょうど上の句をぱっと提出して、コルトレーンに下の句で答えよ、っと言っているようだ。すごい白熱のバトルだ。あっとダメだ、キャノンボールが完全にイニシャチブをとっている。そうこうしているうちに、4分近い曲が終わる。うーん、こんなに面白いバトルが繰り広げられていたのか。
こうなってくると、この軸受けを新装したLP12で、ジャズのバトルの真相(?!)を聞きたくなってきた。うーん、まず思い浮かぶのが、
ソニー・ロリンズとコルトレーンの大バトル「TENOR MADNESS」
それと
クリフォード・ブラウンとロリンズの「valse hot」
両盤ともモノラルだが、明日、これでジャズバトルの熱気を聞こう、そして(勝手に)勝負の判定をしてしまうことにしよう。
こんな実況中継をしたくなってしまう気にさせた新軸受けだった。