KUROのブログ

黒崎政男〜趣味の備忘録

2020年05月


 サックスの音が妙に生々しい。まるで現場にいてコルトレーンのサックスを目の前で聞いているようだ。こんなに緊張感に満ちたアルバムだったっけ?これが、新軸受けKarouselを装着したLINN L12でこのアルバムに針を落とした瞬間の驚き、だった。
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A面 一曲目 say it 途中から



コルトレーンのサックスが実に生々しい。これまでもう50年も(笑)聴き続けてきた演奏だ。このアルバムはコルトレーンのなかではすっかりリラックスした演奏だと思ってきた。
だがなんとリアルで緊張感に満ちているのだろうか。
こうやってきくとマッコイタイナーのピアノが、エルヴィン・ジョーンズのドラムスが、コルトレーンのサックスをじっくり聞きながら弾いているのがよく分かる。それぞれの呼吸というか間の取り方が手に取るように分かる。臨場感、ライブ感がすごい、と言えばいいのだろうか。
このバラッドは、こんなアルバムだったのだろうか。

you don't know what love is

こんなに悲痛なサックスの音だったか。ほんとに愛が通じない相手に対する悲痛な叫びに聞こえる。このアルバムはむしろこれまでムード音楽的だ、とずっと思ってきたのに。

まったく鳴り方が違う。大昔にLPで聞いていたときと。CDで何度も何度も聞いていたときと。Hires音源でデジタルファイルをならしていたときにも。そして、ついこの前までのLP12(Before karousel)で聞いてきた音とも。こんなに真剣に音楽が作られていた、とはという驚きである。


もうすこし、コルトレーンを別なアルバムで聞いてみよう。

そうだ、キャノンボール・アダレーと(マイルス・デイヴィス抜きで)入れたアルバムを聞こう。
Cannonball Adderley Quintet in chicago (mercury)(1959)




A面1曲目 Limehouse Blues




 ふたりの冒頭のサックスのユニゾンがこんなに魅力的だっただろうか。テナーとアルトの二台のサックスがこんなに見事に両方とも分離して聞こえてくる。最初はそれぞれの個性的音でなっているのだが、短いフレーズでバトルを繰り返しているうちに、だんだん、どっちがどっちだか分からなくなってくる。キャノンボール・アダレイはアルトなのに音が太いし明るい。コルトレーンはテナーなのに音が高く鋭いが陰の音だ。最初のキャノンボール・アダレイの超人イスピードアドリブに続いて、コルトレーンが追っかけていくバトル。そのうち、キャノンボールの音がなにやらコルトレーのような音色になっていくように感じられもする。リードしているのがキャノンボール・アダレイなのは明らかで、コルトレーンは分が悪い。そして、2つのサックスがごちゃごちゃになってくるのだが、とにかくものすごい気迫のバトルが繰り広げられている熱気が強烈に伝わってくる。こんなにおもしろいレコードだったろうか!?

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このレコード(Cannonball Adderley Quintet in chicago)は私にとっては実に鳴らしにくいレコードでいい音がした感じがついぞしなかった。今回は、うーん、なんと魅力的な演奏なんだろう、と唸ってしまう。 

■キャノンボール・アダレーの勝ち?

 さらにこの演奏、もう一度聞き直してみる。冒頭のサックスのユニゾンはほんとに魅力的だ。サックス二本であるということが、このLP12を新軸受けにしてから、とてもよく分かる。そしてまずキャノンボールアダレーが実に軽快に飛び出してくる。超乗っている感じだ。すごいアドリブ。続いて登場するコルトレーンはちょっとキャノンボールの熱気に押されて、なんとか出てくる感じ。ちょっと迷っているうちに、キャノンボールが次から次からフレーズを投げ込んでくる。ちょうど上の句をぱっと提出して、コルトレーンに下の句で答えよ、っと言っているようだ。すごい白熱のバトルだ。あっとダメだ、キャノンボールが完全にイニシャチブをとっている。そうこうしているうちに、4分近い曲が終わる。うーん、こんなに面白いバトルが繰り広げられていたのか。


 こうなってくると、この軸受けを新装したLP12で、ジャズのバトルの真相(?!)を聞きたくなってきた。うーん、まず思い浮かぶのが、
ソニー・ロリンズとコルトレーンの大バトル「TENOR MADNESS」
それと
クリフォード・ブラウンとロリンズの「valse hot」
両盤ともモノラルだが、明日、これでジャズバトルの熱気を聞こう、そして(勝手に)勝負の判定をしてしまうことにしよう。
こんな実況中継をしたくなってしまう気にさせた新軸受けだった。








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英国LINN社の現役LPレコードプレーヤーLP12は発売が1972年だからもう50年近く、作り続けられていることになる。その電源部、シャーシー部、アーム、phonoイコライザー部と常に改良版が出され続けているが、今度は、軸受け部分の改良版カルーセルが新発売となった。
さっそく我が家のLP12もこの軸受けに替えてもらって、ようやく今日、聞くことができるようになった。
  一聴して、盤石の安定感のある音がする。まずピアニシモになっても音が痩せることなくそのままフォルテまで安定して音がする。音の厚みが増す。特に、弦楽の内声部の音、セカンドヴァイオリンやヴィオラが実によく面白いほど聞こえる。こんなことやっている!こんな面白い曲だったのか、と唖然とする。
たとえば、愛聴盤のブルゴス指揮アルベニス。A面の二曲目を聞いてみよう。

 


弦楽器の重なりがおどろおどろしいほどの迫力だ。それと音の厚みが明らかに増している。そしてなにか絶対に確信を持った音で鳴らしてくる(抽象的、感覚的表現ではあるが)。

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LINNjapan のHPから写真を拝借してきたが、最初の軸受けに比べると、
外見だけでもかなりしっかりしてきていることが分かる。 
 我が家のLP12にこのカルーセルが取り付けられた写真。 (中央部分)IMG_8589IMG_8589

 しかし、オーディオとはほんとに不思議なものだ。こんな軸受け一つ交換しただけで、すっかり音質が変わってしまう。物理的力学的世界の変化が、聴感的感覚的世界に、見事に影響を与えてしまう。だから、オーディオはほんとうに面白く奥が深すぎる。結局、オーディオライフを50年に渡って続けてしまってきているのは、こんな魅力から逃れられないからだ。

■オーディオ装置は、演奏そのものの良し悪しにまで関与してきてしまう

 さて、いろいろ夢中でLPレコードをこの新軸受け装着装置で聞いていく。
このところ、とても気に入って聞いているピアニストがいる。
 
 

ヴィキングル・オラフソン。1984年アイスランド生まれだ、というから若い。最初にバッハの演奏を聴いたとき、まるでグレン・グールドのエピゴーネン(模倣者)のようだ、と思った。音の粒立ち、タッチ。だれでも、オラフソンを聞いたら、かならずグールドを思い浮かべてしまうだろう。だが、それにしては上手い。硬質でクリスタライズされた音だが、なんとも魅力的な演奏。そののちにフリップ・グラス
piano works というアルバムも聞いたが、さらに彼の硬質のタッチと音色がぴったりに思えた。
 今回はLPレコードでリリースされたバッハ作品を聞いたのだが、唖然とした。音色が、音色が、。。
硬質なタッチが魅力、というよりは、ピアノの深い響きがさまざまな色合いで出現してくる。。これまで聞いてきた(Tidal やCD)オラフソンのピアノは魅力的ではあるが、その魅力はタッチと粒立ちとリズムの心地よい正確さ、だと思っていた。しかし、このLPレコードで、karousel装着のLP12できくオラフソンは、(硬質というよりはむしろ)豊かな響き、1音1音がさまざまな色合いを持ち、深い陰影に満ちた、おどろくほど伝統的なピアノ演奏で飛び抜けた魅力を持ったバッハだった。。




■何度、いままで何を聞いてきていたんだ!という感慨を催すのか

それにしても、今回のカルーセル交換で音を聴いて、すごくいい音になった、いったいこれまでどんな音を聴いてきていたんだろう、という感慨を持つ。だが、それは、毎回、毎回、そう言ってきたではないか。LP12の電源部を強化したときも、アームを替えたときも、カートリッジを替えたときも、urika2を導入したときも、毎回毎回、「すごくいい音になった、いままで何を聞いてきたのだろう」と言ってきた。そして、オラフソンのLPのように演奏自体の価値まで変えてしまうことさえある。

 まあ、だからこそ、オーディオをひとつひとつ替えていくことは、常に新しい喜び(ときには、うまくいかない苦しみも)に満ちているのだと言えるのだろう。



■さまざまこれまでのLPレコードをひっぱりだしては聞いてみたので以下にそれを。

グザビエ=ロトの2019年録音幻想。作曲当時の楽器を使っているので、例えばミュンシュ指揮の分厚い演奏とはひと味違う。


 


つぎは、ストラヴィンスキーでエボニーシンフォニー
Pブーレーズ指揮の名盤だ。木管楽器の響きと迫力が半端ない。




*今日の再生装置は
LP12(urika2) karousel
Klimax DSM
管球式RCA250 シングルアンプ(自作)
タンノイIII LZ(red モニター)

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