今日は隅田川花火大会の日だったが、台風12号のために明日に延期された。真夏の夜、だからというわけでもないが、LINN LP12(urika2)で、Midsummer Night's Dream をWE205F単段アンプで鳴らしてみた。

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 ペーター・マークという指揮者は、特にメンデルスゾーン交響曲第三番スコットランドの名盤で有名で、ほんとにすばらしいスコットランドなのである。かつて私は、この第三番はずっとクレンペラー指揮フィルハーモニアの演奏を愛聴してきた(デジタル・ファイル化Hi-res化したものを、LINN Klimax DSで鳴らす)のだが、嶋護氏が「クラシック名録音106究極ガイド」(2011年ステレオ・サウンド社)でこの盤を絶賛していたので、試しにと思いe-bayで購入してみたのである。嶋氏のガイドはなかなか名文なのでちょっと引用してみる。
「ペーター・マークが40歳の頃に録音したデッカ盤は、みずみずしい演奏と豊かな響きで、聞く人すべての心をとろかしてしまう。・・・デッカ盤の中でもロンドン響とのモーツアルトやメンデルスゾーンはいまだに評価と人気がきわめて高い。その理由は「スコットランド」の始まりの数分で聴けば、誰もが直ちに了解せずにはいられない。これは、キングスウェイ・ホールとウィルキンソン録音の特徴をごっそり集めてみせたショー・ケースなのだ。・・・ハーモニーがまるで陽の光に照れされたように生き生きと浮き上がりだす・・・」(76頁)
 デッカ盤の録音プロデューサー、ウィルキンソン録音の数多くの名盤のこと、そして、キングスウェイ・ホールのこともここでは措く。

 このペーター・マークのスコットランドを聴いたときには、演奏と音のあまりの新鮮さに驚かされた。こんなに長い間いろいろクラシック音楽を聴いてきて、しかもずいぶん聞き慣れた曲が、こんなに新鮮に魅力的に聞こえるとは。。

 そして、この第三番と並んで有名な録音がこの「真夏の夜の夢」なのである(ふー、やっと本題に戻れた。。)。

このところの感じなのだが、真夏の暑い時のオーディオ、真空管の発熱でうんざりはするのだが、何故か、この猛暑のなかでLPレコードは実に<いい音>でなってくれている。普通は、暑すぎて音がへたってダメだ、といいたいところなのだが、ずっといい音で鳴っているのが不思議だ(もしかして私が暑さでボケてしまって、音楽が美しく聞こえてしまうのだろうか)。
 ペーター・マーク指揮の「真夏の夜の夢」は、冒頭、トレモロのような弦のppから始まるが、この音の美しさに、もうここからして、とんでもなくゾクゾクさせられる。そして盛り上がりの金管の炸裂が透明でタイトに響き渡る。もうこれほど心地よく気持ちのいい響きはあるだろうか、というほどの鳴りである。なんとすばらしい演奏と録音なのだろうか。
(ちなみに、もう一つの名盤とされているアンドレ・プレヴィン指揮ロンドン響「真夏の夜の夢」の演奏(1976年録音)のほうは、私の耳には、もう十分聞き飽きた演奏に(初めて聴いて)感じられた。この差はなにか。いつか考えてみよう。)

 もう70年前に開発された技術であるStereoという方式に、改めて感激してしまう。通常は、SPレコードの一つのホーンから流れ出てくる音楽(「モノラル」、とステレオが出来た後では、retrospectiveにそう呼ばれるようになった)ばかり聴いていたので、実体的な音は、ステレオなどというillusion(いわば、人間の聴覚の錯覚を利用して、左右の空間的な広がりを表現する)ではだせないだろう、と思ってきたのである。(まるで私は1950年代の、ステレオという新技術が登場したときに反対した頑迷保守派のようだ(笑))
 ステレオ方式、万歳!と叫びたくなるような演奏(おそらくウィルキンソン録音の特徴なのかもしれないが)で、よくぞ一つの溝grooveから左右の音を見事に描きとってくるLPプレーヤーに感動する。1980年代に夢中になってオルトフォンSPU-AとSME3012アームを使って必死にいい音を出そうとしていたときの音とは隔世の感がある(注)。
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1960年代に作られていたLPレコード。それを(1970年代に初発売され、それからずっと)2018年までに進化深化させてきた今日のLPプレーヤー(しかもイコライザーはデジタル化されているurika2だ)で再生して、ここに一瞬だけ出現する音楽。
 完全なアナクロの喜び。それがアナログではなくデジタルも取り入れて実現されていることはじつに興味深いことである。

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このレコードのジャケット裏面には、わざわざ(おそらく)前持ち主の氏名が記されている。(Charles Douglas -- London -- September 1967)とある。チャールズが1967年の9月にこのレコードを(おそらく喜んで)購入したのだろう。
ちなみに、このDECCA盤は、Ace of Diamondsシリーズで、いわば、RE-issue盤である。英デッカ再発盤なのだが、このシリーズはオリジナル盤と遜色のない音がすると言われている。しかし、注意が必要だ。このシリーズでも、発売時期があって、初期のほうが遙かに音がいい。その見分け方は、レコードレーベルの上の部分(11時~1時)に、大きな文字でFULL FREQUENCY .....とあるものが初期盤。

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後期盤だと、ここが小さな文字でALL RIGHTS OF.... というふうになる。以下の写真は、マーク「スコットランド」のAce of Diamond後期盤。

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このマーク「スコットランド」盤に関しては、結局、いろいろな種類を入手してみている。Ace of Diamond(DECCA)初期盤、AoD(DECCA)後期盤、LONDON初期盤、DECCA初期盤(mono)など。やっぱり絶対最初期盤、と思ったり、後盤でもなかなかだよね、と思ったり、迷宮である。
 E-bayの出品者もこの違いを知って出品している人と知らない人が混在している。Ace of Diamond盤購入のときには、必死にレーベル11時~1時を凝視することになる。このレーベルの写真を挙げていない出品者は論外である、ということになるのである。

(注)もちろん、オルトフォンやSMEのアームそのものがNGと言っているわけではない。今でも、私はEMTアームに直付けできるモノラル専用の旧型オルトフォンカートリッジを探している。ただ、LPプレーヤーの場合、アーム、モーター、ボード、カートリッジを単体で揃えて、それを自分でアッセンブルする場合には、トータルでの出来上がりの質の責任は自分になる。ほんとにその組み合わせがベストなのかどうかはほぼ偶然任せになる可能性が高い。現在、導入している二つのLPプレーヤーは、LP12(+urika2)とEMT930st(+155st)だが、両者ともラインoutまで、一つのメーカーの作り上げであり、私の偶然の選択の余地がないようにしている。今回はそんな形でLPプレーヤーと付き合っている。