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 今日は蓄音機の音がとてもいい。SPレコード(78回転)を電気を使わずに、レコードに刻まれた溝をなぞる針の振動を(ラッパで音を大きくして)聴くのが蓄音機だ。1925年から35年ぐらいまでの間にアメリカや英国で名機が数多く作られた。その後は電気で音を増幅する電蓄(電気蓄音機)が主流となる(これがその後のオーディオ装置に発展していく)ので、今、現役で活躍している蓄音機たちは、いずれも齢80歳から100歳近い高齢者たち、ということになる。
 今日、使っているのは、英国のHandMade蓄音機、1930年ぐらいに作られた(だから御年90歳近い)EMGinn社のExpert Senior。ラッパの口径72cmで紙製。ロンドンの電話帳の紙を貼り重ねて作られたと言われている。
 さて、蓄音機はサウンドボックスという耳にあたる部分があり、それに針をつけてレコードの溝の振動を拾うのだが、その針の素材が音質に大きな影響を与える。
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これが竹針を装着してあるサウンドボックス

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さてこの竹針。日光東照宮から出た燻竹から、このEMGinnのサウンドボックスに合わせて作ってもらった竹針。一回レコードを鳴らすと先が摩耗してちゃんと音が拾えなくなるので、一回一回、竹針を削りながら使用する。

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ハサミのようなカッターで、爪を切るような感じで竹針を削るのだが、実は毎回、切る感触が異なる。湿度が低く部屋が乾燥しているときは、カリッと切れる。だが、加湿器を炊きすぎて部屋全体の湿気が上がっているときには、ヌメッ、という感触になる。こうなってしまうと、音は柔らかくなるが針先が弱くてすぐに減って、再生音が歪みはじめる。一面最後まで持たないことも多い。
 だが、今日の針のカットの感触は、実にカリッとしている。部屋の加湿器を炊くのを忘れていたからだ。だが、こんな竹針のときの再生音は、実にしっかりして硬質で鉄針の再生音に近くなる。しかも竹のしなやかさはちゃんと保ちながら、だ。
 案の定、今日は実にいい音で蓄音機が鳴ってくれる。うれしくなって何枚も掛けて美音を楽しんだ。


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G.エネスコ(violin) プニャーニ作曲ラルゴ・エスプレッシーヴォ(仏コロンビア盤)



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パブロ・カザルス(cello) バッハ アリア