イメージ 1
「パピヨン」p.75 挿絵 Sautiller et danser(手彩銅版画)(拡大)

グランヴィル「花の幻想」(1847)は花の擬人化だったが、こちらはチョウチョウの擬人化でできた作品。作者のヴァランはもともとグランヴィルの挿絵の彫刻師で、グランヴィル亡きあと、「野菜の王国」1851と「パピヨン」1852の二つの作品(のみ)を世に出した。なんとロマンチックで美しい挿絵だろう。下のように原寸大で鑑賞するのもいいが、このように写真を拡大して細部を楽しむのもさらに楽しい。手書きの彩色がとても丁寧になされていることが分かる。

イメージ 4


挿絵頁だけをもう一度見てみよう。

イメージ 5

回って踊るのが、妖精たちのもっとも魅力的な仕事、云々という題がついている。

 この本を私が入手したのは1990年代後半だったと思う。電子テキストが現れはじめ、従来の紙の書籍はどうなってしまうのか、というメディア論的興味から、古い書籍の形式に関心を持ち始めた時期だ。だからそのころは、ヨーロッパの中世写本(一字一句、手書きで羊皮紙に書き付けられたもので、モノとしての書物の存在感はとんでもなくすごい)をはじめ、何十回も重ねて刷られて1頁が出来上がるようなアールデコ期の多色刷り版画(あるいはポショワール)本などに深い興味を覚えた。人間の労苦の詰まった書物が、一瞬にして複製可能で物質としての存在を持たない電子テキストと対比して、ものすごい魅力を放っていると思われた。
 そんな中で、フランス19世紀半ばの、グランヴィルやこのヴァランの書籍は、銅版画で刷られた絵に、一点一点、手で水彩の彩色を施す、というとんでもなくエネルギーが籠もったものたちだ。
 書誌情報は次の通り。
 Varin, Amedie
Les Papillons M?thamorphoses Terrestres des Peuples de l'Air.
Paris: Gabriel de Gonet(1852)
 hand coloured steel engraving & woodcuts.
275x185mm,232&258pp



イメージ 2

これは、上下二巻で、発行当時の未製本のまま、約170年前のものが私のところに伝来(笑)してきたもの。フランスのこうした本は未製本で発売され、買い手が好みに合わせて製本させることが通常だったと思われる。前回紹介したグランヴィル「花の幻想」の二冊もそれぞれ購入者が自分で製本させたはずである。

イメージ 3
下から「花の幻想」1847年版(赤)、1867年版(黒)、「パピヨン」未製本二冊


もうすこし頁をめくってみよう。

イメージ 6
これが表紙だが、右上表題の PAPILLONS (パピヨン)は、蝶の幼虫で形づくられていることが見て取れる。

イメージ 7

これは蝶々とトンボの婚礼の様子だと思われる。かなり怪奇な絵だが、部分を拡大してみると実に細かい銅版画と彩色である。

イメージ 8

こうやって簡単に拡大して細部を鑑賞できるのは、デジタル写真のおかげである。書籍の1頁をiphoneなどで簡単に撮影し、それを写真整理ソフトなどで、一部分にトリミングするだけ。それを通常の大きさで見れば、このような拡大図に簡単になってしまう。
二十年前に鑑賞したのとはまた異なる鑑賞の喜びが現代では可能となった。

 最後に魅力的な画像をいくつかあげておくことにしよう。

イメージ 9


イメージ 10

イメージ 11


イメージ 12