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  国際オーディオショーが東京・有楽町の国際フォーラムで2019.11.22~24の期間で行われていたので、土曜日に出かけてみた。目的は、このたび発売された超弩級アナログ・プレーヤーTechDASのAir force Zeroの音を聴いてみること。なにしろ価格が4,500万円。ゼロの数か単位が間違っているのでは?と思えるほどの高額で、LPレコードを再生するために、どこまで物量作戦で臨むのか、のおそらく極限だろう。
会場にあったこのプレーヤーの写真を撮ってみたが、とにかく巨大。本体重量が350kgもあるという。価格の点からいっても大きさの点からいっても、自分が所有する可能性は完全に0%なので、なにかとても気楽な感じだ。
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Air Force Zero 超弩級アナログプレーヤー 本体重量約350Kg
国際フォーラム 国際オーディオショー にて

 
私が行ったときには、ちょうど英国のオーディオ評論家が、このプレーヤーを使用してアナログ再生をやる会にぶつかったので、たのしく時間を過ごした。

 そして、ここで私が興味を持ったのは、このとき使用されたLPレコード。米国のMobile Fidelity 社がリリースしている高音質リマスターの音源を「ワンステップ・ラッカー・プロセス」処理により、従来のLPレコードより、格段にノイズを軽減し、また音のディティールをより細かく再現するLPレコードだ。ネットの情報を見ると「高音質にこだわるオーディオファイル垂涎の盤といえば、米国サンフランシスコににあるモービル・フィデリティ社。モービル・フィデリティ盤は、米国のモービル・フィデリティ・サウンド・ラボ社が独自のマスタリング技術(ハーフスピード・マスタリングなど)を駆使して、オリジナルマスターテープのデータを限界まで引き出した復刻盤」などとある。
 盤はビルエヴァンスの超名盤「Portrait in Jazz」(1959)。限定品らしいが、まだネット上には在庫があったのでさっそく注文して手に入れる。

 我が家の装置でこのLPレコードをさっそく掛けてみる。この録音後すぐにこの世を去ってしまうことになるベイシスト、スコット・ラファロのベースが実に等身大の姿でそこで演奏しているように見える。曲は「枯葉」だが、ビル・エヴァンスとスコット・ラファロの絡みが、とても緊張感を伴って掛け合っているのが分かる。通常のディスクなどで聴くと、このあたりは、なにかちょっと間が抜けた感じに聞こえるのだが、このUltradisk onestepレコードでは、実に充実した掛け合いに聞こえる。


★4500万円のプレーヤー「モノには限度、風呂には温度」(菅原正二氏の名言と伝えられる)

 国際オーディオショーでレコードプレーヤーAir Force Zeroで聴いたときには、さらに、スコット・ラファロの立ち姿がそこに見えるような感じで鳴っていた。総額1億円もするようなオーディオ装置だったから、そのぐらいの特別感のある音で鳴ってくれていなければ逆に困る。ちなみに、当日の会場では、この4500万円のプレーヤーについて、「ベイシー」の菅原正二氏が語ったとされる「モノには限度、風呂には温度」の格言が、会場で会う知り合いの人々の口々にのぼっていたのが印象的だった。





装置は、いつものように、LPプレーヤーがLINN LP12(urika2)+Klimax DSM+自作WE205Dパワーアンプ+Tannoy IIILZ (red monitor)で鳴らした。
確かに、嘘のように、静寂感がある。この新しいカッティング技術は、従来、5段階かかっていた過程を3段階に減らすことで、音楽的ディテイルを失わず、また、サーフェイズノイズを大幅に軽減した、とある。
このウルトラディスクonestepレコードは、端的に表現すれば、ハイレゾ音源のように極限までノイズを減らしながら、レコードが持っている音の鮮度やリアリティを失わずにいる、ということかもしれない。従来のLPレコードとはなにか次元の違う音がする。
 これはすごいことだ。もしかしたらLP初期盤(オリジナル盤)の音を遙かに凌駕してしまうかもしれない。


★LPレコードの製作過程を改変

 
この付属の解説を見ると、従来の製造過程における「マザー」と「スタンパー」の二段階を無くしたようだ。
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これはすべて45回転で録音されているので、通常33回転で一枚のLPレコードが、二枚になっている。無駄な感じもするが、実はこれがなかなかいい。一面にカッテングされている曲が数分で終わるので、ちょうどSPレコードを聴くときのように、<ながら聴き>が出来ない。なので、真剣に音楽に向き合ってしまう。

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さてさて、これはとても面白いことになってきた。<古いオリジナルこそ最高!>と思う私の骨董趣味の思いは、このアナログの最先端テクノロジーの産物に打ち負かされてしまうのだろうか。

オリジナル盤=対=ウルトラディスクの対決、が勝手に我が家で始まってしまいそうだ。



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