かつて写真に夢中になっていた時代がある。1990年代の約10年間だ。

1930年代から1950年代までの金属製ライカや、6×6版中版カメラハッセルブラッドが対象で、ちょうどフィルム時代からデジタルカメラが登場しつつあったころだ。モノクロ写真を自分でフィルム現像してバライタ紙に焼き付ける、という作業に没頭したり、ハッセルブラッドの広角専用機、名レンズBiogon (38mmF4.5)を直付けしたSWC/Mという機種に夢中になったり。
90年代は本当によく海外旅行にでかけたが、それはライカやハッセルで写真を取りたいがため。いつも、帰りには2,3キログラムになるフィルムの束を、リバーサルフィルムはプロラボに直行して現像、モノクロはすぐに部屋を暗室にして現像焼付、という日々だった。


当時撮っていた写真だ。

 サンピエトロのコピー
Hasselblad SWC/M (Biogon38mmF4.5)  film: fuji Provia100
バチカンのサン・ピエトロ大聖堂       1994©M.Kurosaki








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Hasselblad 500C/M+ Distagon 60mmF5.6  film Velvia50
木場にて                                      1993 ©M.Kurosaki 

思い出してきたが、このころは月刊「日本カメラ」に約30回ほど「哲学者クロサキの新・写真講座」として写真と文章を連載していた。 それは一冊の本にまとまっている。

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まあ、過去の話はこれぐらいにしよう。

2010年代は、基本、キャノンのEOS 5Dやら、ここのところは、EOS RPというフルサイズ、ミラーレスカメラを使っていたのだが、私の好きな単焦点レンズが少ない。たまたま通りかかった量販店で、「キャノンの新しいレンズはまだ出ないですかねえ、ズームレンズばっかりで単焦点レンズはとても少ない」と話を振ると、店員さんは、「そうですねえ、やっぱりミラーレスといえばソニーα7の世界ですからねえ。あっちならたっぷりレンズあるんですけどねえ。」と答えた。そのときはあまり気にもとめなかったのだが、二三日後にふっと、「そうか、キャノンをやめてソニーにしちゃえばいいんじゃない!?」と深夜に思い立った。さっそく、ネットで新宿のマップカメラの通販下取り価格を調べてみた。ここは下取り価格が、程度に関わらず高めのワンプライスに設定されていて、さらに今なら18%下取り価格アップセール中。キャノンEOS RP本体と数本のレンズの下取りで、なんと、ソニーの新型α7RIVに Zeissレンズ35mm Sonnar/2.8をつけて、プラスマイナス0円となった!
さっそく手続きをして、私はあっという間にキャノンユーザーからソニーα7ユーザになってしまったのである。それから約一ヶ月半、

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ソニーα7R IV にZeiss 50mmF1.4 Planar をつけている
 

とても夢中になって、レンズをとっかえひっかえしながら、写真を撮っている日々である。フィルム時代の写真とは良くも悪くも、まったく別世界ともいえるが、それでもめっぽう面白い。
このところ気に入っているレンズは、50mmF1.4という単焦点レンズなのに770gもある planarレンズだ。同じく55mmF1.8 Sonnarという単焦点レンズもとてもいい描写をする。こちらは280g程度だ。どっっちをつけるか、はたから見ればとても愚かしい選択に悩みながら楽しんでいる。

これは50mmF1.4planarで絞りを変えて撮った。約10cm程度の古代オリエントの動物土器。鳥のようにも見えるが足が4本あって、羊かなにかだと思う。一枚目がF8まで絞ったもの。二枚目がf1.4の開放。
表現がずいぶん違うが、開放時のほとんどのボケがあまりにも美しい。
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α7R IV +50mm/1.4 プラナー  絞りF8



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α7R IV +50mm/1.4 プラナー  絞りF1.4 (開放)