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このところ、LPレコード三昧の日々が続いている。LINN社のレコードプレーヤーLP12のモーター部と電源部の改良版がリリースされた(Radikal2)ので、さっそく入れ替えてもらったのがきっかけだ。LPレコードの音がさらに一段とよくなって、レコードを鳴らすのが楽しくてしょうがない、という感じになっている。


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モーター交換後のLP12   外見はまったく変わらない


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LP12の電源部。基板の交換でバージョンアップができる

ウィルマ・コザートという女性録音技師が、ステレオLP黎明期の50年代から60年代にかけて、アメリカのマーキュリー盤に残した数々の超名録音の数々。そのなかでも、ほぼ衆目の一致する最高のレコードといえば、アンタル・ドラディ指揮のストラヴィンスキー「火の鳥」
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これは、LINNのLP12を改良し続けて、先日、新しく提供されたモーター部を(Radikal )と電源部に差し替えて、さらにLPレコードがとんでもない音、おそらくこれまで誰も体験したことがないLPレコードの音を引き出してくれる、とそう妄想したくなるほど、とんでもなくすごい音がしたのである。





火の鳥は、もう再生、というのではなくて、時間と時を超えて、オーケストラそのものを、この場所に招聘して弾いてもらっている、という感覚である。しかも、私が自由にその演奏中に場所を移動したり、感想を発したり、ということができる、というとんでもない快楽。オーディオの醍醐味の極地だろう。(これはファーストマザーのファーストプレス、という一番の初期盤、であることが欄外の数字から分かる)

こんなレコードがほかにもないだろうか。
同じくコザートが残した、シュタルケル(cello)のドボルザーク協奏曲なども、常に「火の鳥」と並んで超絶名録音とされているのだが、私にはなかなかピンとこない。所有しているのは、マーキュリー盤の2nd盤だからなのか。盤面の状態もあまり好ましくないからか。
(Deccaの録音技師ウィルキンソンが残したすばらしい録音群は、もちろん多数ある。ショルティの『春の祭典』やブルゴス『アルベニス』、アンセルメの「オペラガラコンサート」などなど。このウィルキンソンの初期盤レコードに関しては、先日、オーディオ評論家の山之内正さんが拙宅を訪れて対談した。そのうち、雑誌にその様子が紹介されることになると思う。ので、ウィルキンソン盤はいまは除外する)

そこで出会ったのがクリュイタンスのラヴェル管弦楽曲集。ヤフオクで
本邦初出,半掛帯付/クリュイタンス,パリ音楽院管/ラヴェル管弦楽曲全集(JAPAN/ANGEL:AA-9005-D RED WAX 4LP BOX SET
とあって、この手の最初期盤は日本盤でも音がよい、と直感したのである。さっそく落札して、手に入る。
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ラヴェル「クープランの墓」から第二曲目を聞いてみる。




このクリュイタンスの日本初期盤はほんとにいい。実にいい。マーキュリー盤コザートの明るい明示的な音色とは、ニュアンスが少し異なるのだが(もちろん、曲がそもそも異なるのだから、異なるのは当たりまえなのだが)木管楽器の音色の美しさ、オケの音場感のすばらしさ、きわめてニュアンスの感じられる再生音だ。日本盤でも最初期盤なら、ものによってはすばらしい音がするのかもしれない。実はこのクリュイタンスのラヴェルは、私のながい間の愛聴盤(CDで)だったので、演奏が飛び抜けて素晴らしいのは分かっていたのだが、録音がこんなに絶品だったとは、今回初めて理解したのである。

録音技師ウィルマ・コザート(Murcury)やウィルキンソン(DECCA)の録音だけでなく、ほかにもすばらしい名録音が山のようにある!と期待した一夜である。






<補足>
ふと気になって、レコード棚を検索すると、なんと、このクリュイタンスのフランス盤、しかも初期盤とおぼしきものを私は所有していたのだった。あれ?!持ってた?だった。


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もちろん、こちらのレコードもすごい音がした、とだけ記しておこう。比較や初期盤うんぬん、などはまたの機会に。