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ポール・サイモンがガーファンクルと組んで有名になる前の、ポール・サイモンのギターソロ弾き語りのアルバムに「ポール・サイモン ソングブック」(1965)という素晴らしいLPレコードがある。写真に撮ったこの二枚のアルバム。まったく違うジャケットだが、実は同一音源である。モノクロでポールが大きくアップされているほうがモノラル盤("SIMON BEFOR GARFUNKEL recorded 1964 ” 日本CBS SONY1964)、カラー写真のほうがステレオ盤( ”The Paul Simon Song  Book” 英国CBS 1965)である。
 先日、PhileWEB に、「オーディオ哲学宗教談義 Season3の第3回、テーマは「私たちは何を聴いてきたか」『音楽における宗教性』」(哲学者・黒崎政男氏と宗教学者・島田裕巳氏が、音楽・オーディオについて対談をする「オーディオ哲学宗教談義」。今回はそのSeason3の第3回目「私たちは何を聴いてきたのか」『音楽における宗教性』の全編をお届けしたい。)がアップされた。

https://www.phileweb.com/interview/article/202010/12/762.html

対談自体は一年前だったのだが、読み直してみると、島田氏が「明日に架ける橋」の深い宗教性について語っていて、その時私は、高校生時代に「ポール・サイモン・ソングブック」をよく聴いていたという話をしていた。そんなわけで急に懐かしくなって、このLPレコードをヤフオクで探し、入手してみたのである。わたしがかつて所有していたのは、モノクロジャケットのほうで、女性と二人のポール・サイモンのカラー盤のほうは、初めて入手した。そして、よく見てみると、前者がモノラル盤、後者がステレオ盤だった!

うーん、なるほど。今回、プレーヤーをダブルアームシステムにして、モノラル、ステレオ、両方がかけられるようになったので、両者の比較をしてみよう!そう思い立ったのである。




◎ 今回導入したSMEのロングアームの優美な姿に見とれる

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それにしても、このロングアーム、SME3012II(1960年代の製品)は、実に美しい姿をしている。誰かが、このアームはまるで白鳥が舞い降りているみたいだ、と表現したようだが、まさにその通り!あまりの優美な姿につい見とれてしまう。今回のダブルアーム化に当たって、カートリッジはどうせ重いオルトフォンを使うことになるのだから、オルトフォン製やJELCO製のダイナミックバランス型のロングアームを使用すべきなのである。だが、スタティックバランス型でしかも重いカートリッジはぎりぎりの重りで、という困難は承知でこのSMEを使ったのは、とにかくこのアームの優美な美しさに抗しがたいものがあったからである。使ってみると、このアームは、音の重心がどっしりしているうえに、中高域が明るく美しい音を鳴らすように感じられる。とても気に入ったのである。




まずは、モノラル盤を今回ダブルアームシステムで作り上げたもので聴いてみよう。

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◎(1)モノラル盤 を ortofon CG25DiMKII(+SME3012II)で聴く 

 

Paul Simon (Vo + g) April Come She Will  「4月になれば」
ポールサイモン ソングブック A-4 

自作アンプWE205Dpp にスピーカーはモノラル専用 タンノイmonitor 38cm(silver)で鳴っている。なかなかいい音だ。




◎(2)ステレオ盤  LINN LP12 ( Kandid ) 
次に、ステレオ盤をステレオシステムで聴いてみよう。

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 ステレオ LINN LP12 + Klimax DSM + EXZAKT 520

とても解像度が高く、しかも、ポールのギターの細かいニュアンスまですべて鳴らしてくる。声も繊細で美しい。これはいい。ほんとにすばらしい忠実再生だ。
しかし、もしかして、このモノラルとステレオの音質の差は、再生装置の違いというよりは、レコードそのものの日本盤(モノラル)と英国盤(ステレオ)の盤の差なのかもしれない。。
そう思ったら、このステレオ盤を今度は、モノラルシステムで鳴らしてみたらいいのでは、と思いつく。


さきほどのモノラル専用カートリッジortofon CG25 Di MKII のルーツは1948年の設計で、カンチレバーは左右方向にのみ動く完全なモノラル再生専用機である。針圧は3.5gかける。ステレオ盤を再生するとトレースできずに音溝を破損することがある。だが、ステレオ時代になってから設計されたモノラルカートリッジ(たとえば、DENON DL102)は、上下振動にも対応しているので、ステレオ盤をモノラル音源としてかけることができるのだ。


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オルトフォンCG25DiMKII の内側を見る。針先、カンチレバーが通常のカートリッジとは異なり、銅製の棒にダイアモンド針が着いている。



◎(3)ステレオ盤を、モノラルカートリッジDL102(+SME3012II )でモノラル再生する

 ステレオ盤をモノラルカートリッジDENON DL102 で再生する。
なかなかいい。ギターがいい。しかし、ポールの声はちょっとハスキーな音色が混じる感じもする。。
なるほど。ギターやポールの声の音色のヒダや繊細さは、どうもレコードの差、のような気がしてくる。このステレオ盤のほうが繊細な音が入っている、という感じだ。



◎(4)モノラル盤 を ortofon CG25DiMKII(+SME3012II)で聴く ((1)と同一)
最後に装置をモノラル専用に戻して、カートリッジもオルトフォンに付け替えなおす。もう一回、なんとなく再生してみた!そうしたら、アンプが温まったのか、カートリッジがなじんだのか、とても気持ちのいい音でなり始めた。ポール・サイモンの声がしっかりと芯があって、なにか強く訴えかけてくるようだ。


モノラル盤 +Ortofon CG25Di MK2 

 
このアルバムは、「アイ・アム・ア・ロック」、「サウンド・オブ・サイレンス」を始めすべての曲がすばらしいが、私はこの「4月になれば」が特に好みなのである。